拳を上げて応援する中信兄弟ファン バットを振る巧虎マスコット

Taichung · 2026.6.27

台湾プロ野球を、
初めて観る。

中信兄弟VS統一7-ELEVEn獅

台中洲際棒球場 / 6月27日(土)17:05

First pitch まで あと —

台中での観戦に合わせた、初めての台湾プロ野球ガイドです。この日は、球場で自社IP「巧虎」のイベントも行われます。試合の見方、球団の背景、そして球団を持つ企業の話まで、新幹線のあいだに読めるよう整理しました。

高鐵の車内でガイドを読む様子
行きの高鐵で、ざっと予習を。

01

巧虎 Sweet Land

Why we came to Taichung
巧虎Sweet Landのメインビジュアル

4月3日〜5日に台中洲際棒球場で開かれた「巧虎 Sweet Land」は、球場全体が親子向けの体験空間になった企画でした。スイーツの売店、写真スポット、ぬりえ、ミッション形式の遊びなど、野球観戦とキャラクター体験が同じ場所に並びました。

3日間の予定でしたが、雨で1日が順延となり、その振替分が6月27日にあたります。4月ほど球場全体の装飾は多くないかもしれませんが、「野球の興行が、親子・キャラクターIP・SNSへと広がっている事例」として見る価値があります。

中信兄弟の選手が巧虎の人形を抱える前回イベントの一場面
前回イベントでは、選手と巧虎が同じグラウンドに。
前回の様子 YouTubeで見る ↗
このイベントをビジネス視点で読むと

本質は、スポーツ協賛というより「IP体験の出張店舗」です。野球ファン以外の親子を球場に呼び、滞在時間を延ばし、写真を撮ってもらう。子どもの記憶に、巧虎と球場体験がひとつで残ります。

当日、その世界観が球場内にどれだけ残っているか――順延分で装飾が限定的でも、この視点を持つと「なぜ球団とIPが組むのか」が見えてきます。

02

本日のカード

CTBC Brothers vs Uni-Lions
中信兄弟

ホーム / 台中

中信兄弟

台湾でもっとも人気のある球団のひとつ。台中の黄色い応援席は、台湾野球を象徴する風景です。中信系の金融グループによるブランド接点としても見られます。2026年前期は苦戦していて、巻き返しが見どころです。

  • 監督は元オリックス・阪神の平野惠一さん(日本人)
  • 金融グループによる人気球団経営
  • Passion Sistersと一体になった応援文化

VS

統一7-ELEVEn獅

ビジター / 台南

統一7-ELEVEn獅

1990年から続く創設球団のひとつ。台南を拠点とし、統一企業の生活ブランドと結びついた、台湾球界の老舗です。継続性そのものが価値になっています。

  • 監督は林岳平さん(投手出身)
  • 食品・流通大手の統一企業が支える球団
  • 陳傑憲、蘇智傑など見どころが多い

球場の外側で見れば、これは「金融」と「食品・流通」の対決でもあります(→「球団を持つ企業の話」で詳しく)。

台中洲際棒球場のグラウンド
今日の舞台。台中洲際棒球場のグラウンド。

03

日本から渡り、
台湾の文化になった

A short history of Taiwan baseball
戦前の学生野球から現代の満員スタジアムへ
学校スポーツから、黄色く埋まる現代の球場へ。

台湾の野球は、日本統治時代に学校スポーツとして入りました。1931年、嘉義農林(KANO)が甲子園で準優勝したことは、「自分たちもこの競技で語れる」という記憶を台湾に残しました。戦後も少年野球や国際大会を通じて根づき、1990年のプロリーグ(CPBL)開幕につながります。輸入されたスポーツが、世代を超えて台湾自身の文化になった――それが台湾野球の背景です。

避けて通れない、八百長の過去

ただし、まっすぐ成長してきたわけではありません。1990年代後半以降、CPBLは八百長問題で大きく傷つきました。ファンの信頼は落ち、球団数も揺らぎました。国民的なスポーツであるほど、その打撃は重いものでした。台湾野球を語るうえで避けられない一面です。

04

なぜ、いま
盛り上がっているのか

Why it is booming now
出張者が球場に入っていく様子
いま、球場には人が戻ってきている。

0

2025年・1試合平均の入場者数。リーグ創設36年で初めて1万人を超えました。(数字は要確認)

1試合平均入場者数の推移 6,000 7,684 10,373 2023 2024 2025

八百長問題のあと、観客は一時1試合平均1,700人ほどまで落ち込みました。そこからの回復が、ここ数年で一気に加速しています。背景には、いくつかの追い風が重なっています。

1
プレミア12 2024での初優勝

世界一を争う国際大会で、台湾代表が初優勝。決勝の舞台は東京ドーム、相手は日本で、結果は4対0の完封勝ちでした。帰国後のパレードには約5万人。大会MVPは、今日のビジター・統一獅の主軸、陳傑憲でした。

2
チアリーダー文化の人気

各球団が専属チアを持ち、中信兄弟のPassion Sistersはその代表格。スターチアも生まれ、味全龍の林襄はSNSのフォロワーが180万人超。ある研究では、人気チアの加入が観客動員を1割以上押し上げた年もあったと報告されています。

3
器と体験の進化

2023年末に台湾初の屋根付き4万人球場「台北ドーム」が開業。人気アニメとのコラボ(クレヨンしんちゃんの主題日など)やテーマデーが次々と行われ、「親子で一日楽しむ場所」へと観戦体験が広がっています。

4
球団が増えたこと

味全龍が2021年に一軍へ復帰し、台鋼雄鷹が2024年に新規参入。リーグは6球団体制になりました。台北・台中・台南・高雄と拠点が各地に広がり、ファン層も厚くなっています。

つまり今の盛り上がりは、「もともと人気がある」だけではありません。一度信用を失ったリーグが、国際大会での勝利、エンタメ化、新しい球場、球団の拡張によって、もう一度価値を作り直した結果として見るのが正確です。

05

いまの勢力図

Six clubs of the CPBL
中信兄弟
中信兄弟
台中 / 中信金融グループ(金融)
統一7-ELEVEn獅
統一7-ELEVEn獅
台南 / 統一企業(食品・流通)
味全龍
味全龍
台北 / 味全・頂新(食品)
富邦悍將
富邦悍將
新北 / 富邦金融グループ(金融)
樂天桃猿
樂天桃猿
桃園 / 楽天(デジタル)
台鋼雄鷹
台鋼雄鷹
高雄 / 台湾鋼鉄グループ(鉄鋼)

2026年前期の順位(6/23時点)

順位球団勝敗
1味全龍38勝18敗

前期上位の中心。

2富邦悍將30勝24敗

上位を追走。

3台鋼雄鷹29勝27敗1分

新興として健闘。

4統一7-ELEVEn獅27勝28敗1分

今日のビジター。上位浮上を狙う。

5樂天桃猿20勝31敗2分

2025年王者ながら苦戦。

6中信兄弟18勝34敗2分

今日のホーム。人気球団だが前期は苦しい。

中信兄弟は2024年に台湾シリーズを制し、2025年もレギュラーシーズン1位でした。その強豪が2026年前期は最下位に。「人気球団の苦戦」という文脈で見ると、当日の応援席の熱量がより興味深く映ります。(成績は要確認)

台湾の球場の外観
台北・台中・台南・高雄――球場は各地に。
球団を持つ企業の話(要約)

球団を持つのは、金融(中信・富邦)、食品・流通(統一・味全)、デジタル(楽天)、鉄鋼(台鋼)。野球は彼らにとって、広告の延長ではなく、顧客接点・地域接点・ブランド好感度を束ねる装置です。

今日のカードも、外から見れば「金融(中信)」対「食品・流通(統一)」。詳しくは末尾の「球団を持つ企業の話」で。

06

台湾野球の見どころ

How Taiwan watches baseball
タオルを振り上げる黄色い応援席とチア
攻撃中、客席はほとんど休まない。

日本の球場から来ると、台湾の球場はまず「音」が違うことに気づきます。攻撃のあいだ、自分のチームが攻めている側の客席は、ほとんど休みなく声を出し続けます。先導するのは、各球団が抱える専属のチアチームです。打席ごとに違う応援歌が流れ、太鼓のリズムに合わせて何千人もが手拍子をそろえる。日本のような「相手の攻撃中は静かに見る」という間合いとは、少し勝手が違います。

面白いのは、応援が選手一人ひとりに結びついていることです。台湾では、選手ごとに専用の応援歌やコールがあり、観客がそれを覚えて一緒に歌います。応援歌は、いわば選手のテーマソングであり、ファンと選手が一緒に作るキャラクターのようなものです。言葉が分からなくても、手拍子だけで自然と輪に入れてしまうのが、この球場の心地よさかもしれません。

球場でよく耳にする言葉を少しだけ。。タップで読みと意味が出ます。

中信兄弟のチア Passion Sisters
応援の中心にいる中信兄弟のPassion Sisters。

得点圏に走者が進むと、球場の温度がもう一段上がります。チア、太鼓、客席、ベンチの動きがひとつになり、競技を見ているのか、ライブを見ているのか、境目が薄くなる瞬間が訪れます。攻守が交代して相手の攻撃になると、同じ球場の空気がふっと入れ替わる。その温度差そのものが、台湾の「ホーム」の感覚を伝えてくれます。

試合が動いていない時間にも、退屈はあまりありません。イニングの合間にはチアのパフォーマンスやファン参加の企画が挟まれ、球場はずっと何かが起きている状態に保たれています。売店やグッズ、写真スポット、親子連れの賑わいまで含めて、台湾の球場は「一日を過ごす場所」として設計されているのだと感じます。

そして、静かに楽しめる部分も残っています。終盤の継投や代打、バントといった采配には、監督の考え方がにじみます。中信兄弟を率いるのは元オリックス・阪神の平野惠一監督。日本野球で培われた細かさが終盤のベンチワークに見えてくると、また違った角度から試合を味わえます。

07

注目の選手

Players to watch · CTBC Brothers
中信兄弟の選手たちのプレー
守備・打撃・走塁――役割で覚えると面白い。

当日のスタメンは試合前まで確定しません。「出場予想メンバー」として、見られたら注目する用途で。成績は2025年シーズンが基本です(要確認)。タップで特徴と検索リンクが開きます。

08

球団を持つ企業の話

The business behind the game
球場を中心に広がる企業の接点のイメージ
球場は、企業が生活者に触れる場でもある。

業績管理の視点から読むと、この試合は「企業が球団から何を回収しているか」を観察する小さなフィールドワークになります。親会社の業種はばらばらで、ひとつの物差しでは並べられません。金融は純利益と総資産、事業会社は売上高で規模を見る、という前提で読んでください。

家族連れで賑わう球場イベント
球場は、企業が家族連れと出会う場でもある。

中信兄弟 / 金融

CTBC(中信金融グループ)

中核は台湾でも有数の民間銀行

純利益 約3,385億円 / 総資産 42兆円規模

人気球団を、口座や保険では作りにくい「生活者との感情接点」として持っている、という構図です。黄色い応援は、金融ブランドの硬さを和らげる装置でもあります。

統一7-ELEVEn獅 / 食品・流通

統一企業

台湾の7-ELEVENは7,000店超

売上 約3.1兆円 / 純利益 約970億円

生活インフラ級の企業。1990年から球団を持ち続けていること自体が、「長く・近い」ブランドのメッセージになっています。

富邦悍將 / 金融

富邦金融グループ

金融持株業界で利益首位

純利益 約7,090億円 / 総資産 56兆円規模

今日の中信兄弟と同じ「金融が球団を持つ」グループで、規模ではこちらが上。同じ金融でも、という比較軸として面白い存在です。

樂天桃猿 / デジタル

楽天グループ(日本)

6球団で唯一の外国企業

売上 2兆2,792億円 / 最終損益 ▲1,624億円

売上は巨大ですが、モバイル事業の先行投資で最終赤字。「規模=利益」ではない好例です。球団を、EC・ポイント・アプリといった経済圏への入口に位置づけています。

味全龍 / 食品

味全食品(背後に頂新グループ)

運営母体としては最も小規模

売上 約1,100億円

背後には、中国で即席麺・飲料最大手の康師傅などを擁する非上場の頂新グループ(球団との資本関係は間接的)。一度消えた球団を復活させた、ブランド回復の物語を持ちます。

台鋼雄鷹 / 鉄鋼

台湾鋼鉄グループ

非上場の企業集団(横比較は困難)

グループ年商 5,170億円規模(報道ベース)

鉄鋼というB2Bの企業が、高雄の新球団を通じて、地域の生活者から見える存在になろうとしています。中信・統一とは異なる投資ロジックです。

同じ「球団を持つ」でも、回収しているものは企業ごとに違う。金融はブランドの感情化、食品・流通は生活者との信頼。今日のカードは、その縮図として眺められます。

数字は最新通期(FY2024)の概算で、要確認。日本円は1台湾ドル≈4.7円で換算しています。金融持株会社(中信・富邦)は売上ではなく純利益・総資産で規模を見ています。

確認情報・出典

Sources

確認日:2026年6月(調査時点)。順位・選手成績・出場可否は試合当日まで変動します。試合前日に一次情報で最終確認してください。